はじめに|“なぜ手を取らなかったの?”が頭から離れない
『ルパン三世 カリオストロの城』。
クラリスが手を差し伸べたあのラストシーン。ルパンは優しく笑いながら、そっとその手を取らずに別れを告げました。
子どもの頃は「え〜っ!手を取って一緒に逃げてよ!」と思っていましたが、大人になった今は、違う感情がこみあげてきます。
ルパンはなぜ手を取らなかったのか。その裏にあった“優しさ”や“覚悟”を、私なりに考察してみたいと思います。
改めて、ラストシーンを振り返る
クラリスの「一緒に…」に応えなかったルパン
火災の中、無事に事件が終わり、クラリスはルパンに言います。
「一緒に連れてって!」と。
でもルパンは、彼女の手を優しく断り、「次はいい男を見つけな」と微笑みながら去っていきます。
あの一言に、どれだけの思いが込められていたのか──。
「待ってます」と言ったクラリスの切なさ
ルパンの背中に向けて、クラリスは「私は待っています」と告げます。
それはただの恋ではなく、彼への感謝や憧れ、そして“もっと一緒にいたかった”という気持ちのこもった言葉だったと思います。
あの一瞬が、彼女の初恋のすべてだったのかもしれません。
ルパンがクラリスの手を取らなかった理由(私なりの考察)
1. 自由を愛するルパンは、彼女を縛りたくなかった
ルパンは自由を何よりも大切にする男です。
そんな彼が、純粋なクラリスを“自分の世界”に連れていくことは、彼女の未来を奪うことだと感じていたのではないでしょうか。
お姫様として、ちゃんと陽の当たる場所で生きていける未来を残したかった──その想いが、あの選択につながったのかもしれません。
2. 自分が“恋をしてはいけない存在”だと知っていた
ルパンは自分の生き方が“裏の世界”であり、平穏な日常にはなじまないと理解しています。
クラリスの純粋な好意を受け取ってしまえば、彼女を危険な世界に巻き込んでしまう。
あえて手を取らなかったのは、“自分の生き方”をよく知る彼なりの誠実さだったのではないでしょうか。
3. 彼女の人生に“後悔”を残したくなかった
ルパンはクラリスの初恋相手であることを、ちゃんとわかっていたはずです。
だからこそ、「その想いを美しい記憶として残してあげたい」と思った。
それが、手を取らないという形の“優しさ”だったと私は感じています。
ルパンの言葉の裏にあったメッセージ
「次はいい男を見つけな」の重さ
このセリフ、子どもの頃は「なんでそんなこと言うの〜!」とショックでした。
でも今は、これは“彼女を突き放す言葉”ではなく、“彼女の幸せを祈る言葉”だったとわかります。
自分じゃその幸せを守れない。だから、違う形で背中を押す──。
まさにルパンの“大人の愛”を感じさせる名セリフです。
ルパンにとっても、忘れられない出会いだった
あの別れのあと、ルパンは振り返ることなく車を走らせますが、心の中ではきっと何度もクラリスの姿を思い出していたはず。
ルパンにとっても、クラリスはただの“助けた相手”ではなく、自分の中の“何か”を揺さぶった存在だったのではないでしょうか。
まとめ|あの手を取らなかった選択は、愛だった
ルパンがクラリスの手を取らなかったのは、愛がなかったからではありません。
むしろその逆で、彼女を思う気持ちが本物だったからこそ、未来を奪うような行動を取らなかったのです。
その選択ができたことこそ、ルパンという男の“かっこよさ”なのかもしれません。
「手を取らない」という選択も、
ときには最大の愛情表現になる。
切なくて、でもあたたかい。
この物語が今も多くの人の心に残り続ける理由が、やっと少しわかった気がします。
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