『E.T.』なぜ空を飛ぶ自転車は感動的なのか?名場面に隠された3つの魔法

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映画『E.T.』の数ある名場面の中でも、最も人々の記憶に深く刻まれているのが、エリオットが自転車で空を飛ぶシーンです。政府の追手から逃げる緊迫した状況の中、E.T.が放つ魔法によって子供たちの自転車は夜空へと舞い上がります。

なぜ、このシーンは時代を超えて私たちの心をこれほどまでに揺さぶるのでしょうか?そこには、スティーヴン・スピルバーグ監督が仕掛けた3つの魔法が隠されていました。


満月を背景に飛ぶ自転車の「希望」

このシーンの最も印象的なビジュアルは、満月を背景に、自転車のシルエットが空を横切る瞬間です。この映像は、単に美しいだけでなく、物語の核心を象徴しています。

満月は、古くから「希望」や「夢」の象徴とされてきました。孤独を抱えていたエリオットが、E.T.という特別な存在と共に重力という現実の制約を越え、満月に向かって飛び立つ姿は、見る者に「どんな困難な状況でも、希望を信じれば夢は叶う」という強いメッセージを伝えています。

このシーンは子供たちの純粋な希望が大人の冷たい現実を打ち破る、魔法のような瞬間だったのです。

緊迫感から感動への「ギャップ」

このシーンが感動的なのは、その直前まで、パトカーがサイレンを鳴らし、政府の追手たちが迫るという緊迫感に満ちた状況が続いていたからです。

観客は、子供たちが捕まってしまうのではないかというハラハラを体験します。しかし、E.T.が超能力を発動し自転車がふわりと空に浮かび上がった瞬間、そのハラハラは一瞬で安堵と感動へと変わります。この感情の「ギャップ」が観客の心を強く揺さぶり、感動を何倍にも増幅させているのです。

ジョン・ウィリアムズの壮大な音楽

この名場面の感動を決定づけているのが巨匠ジョン・ウィリアムズが手掛けた、壮大なオーケストラのスコアです。

映画の冒頭からE.T.のテーマ曲は使われていますが、このシーンで初めて、その音楽がフルオーケストラで高らかに鳴り響きます。緊張感のあるチェイスの音楽から一転、自転車が空に浮かんだ瞬間に流れるメロディーは観客を感動の絶頂へと導きます。音楽は空を飛ぶという非現実的な出来事を私たちの心に深く刻み込む、まさに魔法のような役割を果たしているのです。


まとめ

『E.T.』の空を飛ぶ自転車のシーンは、単なる視覚的なスペクタクルではありませんでした。それは、監督の個人的なテーマ、物語の巧みな構成、そして音楽の力が一体となり「夢を信じることの美しさ」を私たちに教えてくれた、永遠に残る名場面なのです。

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