ディズニー/ピクサーの短編『トイ・ストーリー・オブ・テラー!』は、そのタイトル通り、ホラー映画やミステリー映画への愛がぎっしり詰まった作品です。
おもちゃたちがモーテルの暗闇で繰り広げる冒険は、実は有名なホラー映画の「あるある」や「演出」を、ピクサー流のユーモアとパロディでオマージュしています。この短編に隠された、映画ファン必見の元ネタと隠し要素を徹底解説します。
舞台となる「モーテル」全体がホラー映画の象徴
ボニー一家が宿泊する、物語の舞台となる「モーテル」の描写そのものが、数々のホラー映画の雰囲気を醸し出しています。
- 『サイコ』(Psycho)のオマージュ:
- モチーフ: 映画に登場する「スリープ・ウェル・モーテル(Sleep Well Motel)」の寂れた雰囲気は、ヒッチコック監督の傑作ホラー『サイコ』に登場するベイツ・モーテルを彷彿とさせます。
- 演出: モーテルでの出来事が「普通の場所で起こる異常な事件」というホラーの定石を踏襲しており、暗闇や影の使い方は、ヒッチコック的サスペンスを意識しています。
- 『シャイニング』(The Shining)の不気味さ:
- 演出: 映画終盤で登場する、モーテルに隠された「秘密の部屋」や、館全体に漂う「孤独と狂気」の雰囲気は、キューブリック監督の『シャイニング』が持つ、閉鎖空間の恐怖をパロディにしています。
亡霊とモンスターの「あるある」パロディ
短編の中で、おもちゃたちが次々と姿を消していく演出は、ホラー映画の定番である「モンスターによる一人減らし」を可愛らしく再現しています。
- 水中に潜むモンスター:
- シーン: バスルームでバズが、便器の底の暗闇に引きずり込まれるシーンは、水場や暗い穴からモンスターが襲いかかるという、ホラー映画の「水場あるある」の典型的なオマージュです。
- 「隠された部屋」と罠:
- シーン: おもちゃたちが、モーテルの従業員によって**「売却されるための箱」**へと運ばれていく展開は、人間が知らないところで恐ろしい陰謀が進んでいるという、ミステリーホラーの定番です。
新キャラと演出に隠された「ホラー愛」
- コンバット・カール(Combat Carl)とその教え:
- 元ネタ: サバイバルが得意なG.I.ジョー風のおもちゃ、コンバット・カールが放つセリフ「訓練を思い出せ!」は、軍隊やサバイバルホラーで危機的状況に陥った主人公が過去の教えを思い出すという、熱血系のオマージュです。短編では、この熱血指導が役に立たないことがコミカルに描かれます。
- 暗闇と「見えない恐怖」:
- 演出: ほとんどのシーンがおもちゃ目線で描かれ、暗闇の中で何が起こっているか観客には見えないという演出は、観客の想像力を刺激する古典的なホラー演出の技法です。
まとめ
『トイ・ストーリー・オブ・テラー!』は、わずか20分の短編でありながら、ピクサーのクリエイターたちが持つホラー映画への造詣の深さを証明しています。
有名ホラー映画へのオマージュを散りばめつつ、最終的には「おもちゃの友情と勇気」というトイ・ストーリーの核となるテーマに帰結させることで、大人も子供も楽しめる、完成度の高いハロウィン短編となっているのです。
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