『鬼滅の刃』に登場する上弦の参・猗窩座(あかざ)は、「弱者が嫌い」「強さを求める」という極端な思想を持つ鬼として描かれます。しかしその根底には、誰よりも「弱さ」を痛感した人間時代の記憶が刻まれていました。本記事では、猗窩座の過去に焦点を当て、PTSD(心的外傷後ストレス障害)的な視点から、彼の“罪悪感”の正体を読み解いていきます。
猗窩座=狛治(はくじ)の人間時代と“罪”の始まり
猗窩座の人間時代の名前は「狛治」。父の薬代を稼ぐために幼くして盗みを繰り返していた狛治少年は、「盗人の子」として虐げられる環境に生きていました。結果として、父は息子の将来を案じて自害。それは、狛治にとって人生最初の「喪失体験」であり、自分の行動が人を死なせてしまったという“罪悪感”を植えつける事件でした。
慶蔵と恋雪、再び得た居場所とその喪失
慈悲深い慶蔵と、その娘・恋雪に救われ、狛治は再び人生を取り戻します。病弱だった恋雪の体調が回復し、婚約も決まりかけた矢先──薬湯に毒を入れられ、慶蔵と恋雪は命を落とします。この時の喪失は、彼の中に深い「無力感」と「報復心」を残しました。
その直後に道場破りをし、関係者を皆殺しにした狛治は、「誰かを守れない自分」を憎み、心の底から“罪悪感”を抱え続けることとなります。
“記憶をなくしても残った罪悪感”と鬼としての葛藤
鬼になった後の猗窩座は、人間時代の記憶を失いながらも、どこか「空虚」さと「焦燥感」に苛まれています。それはまさに、トラウマの影響によって意識には昇らないが無意識に刷り込まれた“罪悪感”の現れ。
彼が「強者」だけを好み、「弱者を嫌う」のは、自分の弱さが原因で大切な人を守れなかったという過去の罪から逃れるための行動にも見えます。これはまさに、PTSDにおける“回避行動”のように読み取ることができます。
炭治郎の言葉で揺らいだ“心の檻”
猗窩座との死闘の中で、炭治郎が発した「人間に戻れ」という言葉が、彼の心に残った“罪悪感の扉”を開きます。鬼として戦い続ける理由を見失い、ついには涙を流しながら過去を取り戻す姿は、罪を受け止めようとする“赦しの一歩”にも見えます。
まとめ:猗窩座は“加害者であり被害者”だったのか?
猗窩座の鬼としての残虐性の裏には、深く刻まれたトラウマと、自責の念が隠れています。PTSD的な視点から読み解くことで、彼のキャラクターはより立体的になり、単なる“悪役”ではなく、弱さに翻弄された“悲しき加害者”という側面が浮かび上がってくるのではないでしょうか?
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