『E.T.』スピルバーグは「孤独な子供」だった?監督自身の初期テーマを読み解く

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1982年に公開された映画『E.T.』は、世界中の観客を感動させ、SFファンタジー映画の金字塔となりました。しかし、この作品の根底には、監督であるスティーヴン・スピルバーグが、自身の幼少期から抱え続けていた「孤独な子供」という個人的なテーマが深く隠されています。

なぜ彼は『未知との遭遇』や『E.T.』といった初期の作品で、一貫して孤独な子供の物語を描き続けたのでしょうか?


スピルバーグの幼少期と「父親の不在」

スピルバーグ監督は、両親の離婚を経験しており、特に父親が家庭から去っていくことに対する複雑な感情を抱いていました。

この経験は、彼の初期の作品に色濃く影響を与えています。例えば『未知との遭遇』では、主人公のロイが家族を捨てて宇宙人と旅に出るという形で、父親の不在が描かれています。

『E.T.』でも、主人公のエリオットは、父親が家を出ていったことで、心に大きな孤独を抱えています。彼は、その孤独を埋めるために、E.T.という特別な存在を家に迎え入れます。E.T.は、エリオットにとって、ただの宇宙人ではなく、彼が探し求めていた「心のよりどころ」であり、「もう一人の自分」でもあったのです。

宇宙人を通して描かれる「理解者」への渇望

スピルバーグの作品に繰り返し登場する宇宙人は、彼にとっての「理解者」でした。

彼は、自分が周囲の友人たちと少し違うと感じており、その孤独感を宇宙人という存在に投影していました。『E.T.』で、エリオットが心を通わせたのは、言葉を話すことができないE.T.だけでした。それは、エリオットが言葉ではなく、心で通じ合える存在を求めていたことを示しています。

E.T.は、エリオットの孤独を埋めてくれるだけでなく彼が抱える深い悲しみを、言葉を交わすことなく理解してくれました。E.T.との出会いは、エリオットにとって、孤独から解放されるための奇跡的な出来事だったのです。

『E.T.』はスピルバーグ自身の「ヒーリング・ストーリー」

『E.T.』は、単なるSFファンタジーではありません。それはスピルバーグ監督が、自身の幼少期の孤独や父親との関係に折り合いをつけるための「ヒーリング・ストーリー(癒しの物語)」でした。

映画の終盤、エリオットとE.T.は別れますが、E.T.はエリオットの心の中に「永遠にいる」と告げます。このセリフは、監督自身の心の中に家族との絆や幼少期の記憶が、永遠に生き続けるというメッセージを伝えているようにも感じられます。


まとめ

『E.T.』は、スピルバーグ監督の個人的な感情と深く結びついた作品です。彼は、孤独な子供の物語を描くことで、自分自身の心の傷を癒し、多くの観客に「誰もが心のどこかに、自分だけのE.T.を抱えている」という普遍的なメッセージを届けたのです。

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