大ヒット公開中の映画『国宝』。主人公・立花喜久雄の壮絶な人生と芸の軌跡を描いた本作で、ひときわ強い存在感を放つのが、人間国宝の女形:小野川万菊です。
映画では、喜久雄を導く存在として描かれていますが、その背景には映画では語られなかった原作ならではの物語が隠されています。実は、万菊と喜久雄の師匠である半次郎(後の吉右衛門)は、かつて恋人同士でした。
なぜ、男である半次郎と女形である万菊は、愛し合ったのでしょうか?そして、その関係は、喜久雄の人生にどのような影響を与えたのでしょうか?この記事では、映画だけでは分からない、万菊と半次郎の間にあった愛の物語を解き明かします。
映画では語られなかった「半次郎と万菊の恋仲」という原作設定
原作小説『国宝』では、半次郎がまだ若かった頃、女形である万菊と恋仲であったという衝撃的な設定が描かれています。これは、当時の歌舞伎界における男色文化や、芸に生きる人々が持つ独特な価値観を象徴するものです。
映画ではこの設定は描かれませんでしたが、万菊が喜久雄を特別なまなざしで見守る理由が、この過去にあったと読み解くことができます。万菊は、かつて愛した半次郎の才能と生き様が、弟子である喜久雄の中に宿っていることを感じ取っていたのかもしれません。
彼女が喜久雄に注ぐ眼差しは、単なる弟子への指導ではなく、かつて愛した半次郎の「芸の魂」を継ぐ者への、深い愛情と期待であったと考えることができます。
「男の恋」と「芸の道」:二つの情熱が重なる世界
半次郎と万菊の関係は、単なる恋愛ではありませんでした。二人は共に芸にすべてを捧げる役者でした。
万菊は、美の極致を追求する女形であり、半次郎は、力強さと豪快さを武器に、新しい芸の形を模索する役者でした。彼らの愛は、「芸の道」という共通の情熱によって深く結ばれていました。
それは、世間一般の常識とは異なる、芸に生きる者だけが理解し合える、特別な絆でした。彼らの愛の物語は、芸が人生であり、人生が芸を深めるための経験であるという、歌舞伎の世界が持つ、奥深い哲学を象徴しているのです。
まとめ:万菊は「芸と愛」を継承する生きる伝説
映画『国宝』における小野川万菊は、喜久雄の運命を変えた「もう一人の師匠」でした。しかし、原作の設定を知ることで、彼女の存在は、さらに奥深い意味を持つことがわかります。
万菊は、単に喜久雄を指導しただけでなく、彼を通して、かつて愛した半次郎の芸の魂を、そして芸に生きる人々の愛の形を、次世代へと受け継ごうとした「生きる伝説」だったのです。
この背景を知ることで、映画の感動がさらに深まり、万菊というキャラクターが持つ唯一無二の魅力に私たちは改めて気づかされるでしょう。
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