はじめに|信は本当に実在したのか?
『キングダム』の主人公・信(しん)は、下僕出身の少年が「中華統一を成し遂げる大将軍」を目指して戦場を駆け抜けていく姿が描かれています。
物語の中で数々の激戦を乗り越え、仲間と共に成長する信の姿に、多くの読者が胸を打たれたことでしょう。
では、この“信”という人物は、実際の歴史上にも存在したのでしょうか?
この記事では、信のモデルとされる実在の人物「李信(りしん)」について、その経歴と『キングダム』との違いを中立的に解説していきます。
信のモデルは「李信」という実在の将軍
李信将軍とはどんな人物?
李信(りしん)は、紀元前3世紀頃に実在した秦の将軍で、始皇帝に仕えていた人物です。
『史記』や『資治通鑑』などの歴史文献にその名が登場し、若くして将軍に抜擢された経歴を持つことが記されています。
特に有名なのが、「燕・代への遠征」や「楚との戦い」での活躍です。
中でも楚の将軍・項燕との戦いでは、秦軍が一度大敗を喫し、その後、名将・王翦(おうせん)に交代することになります。
始皇帝に信頼された若き将軍
当時の始皇帝は、保守的な王翦よりも若くて勢いのある李信を重用しようとしました。
これは『キングダム』でも描かれる「若い力に未来を託す」という思想と重なります。
このように、信(李信)は史実でも「若さ」と「期待」に満ちた人物として記録されているのです。
『キングダム』と史実の違いは?
創作ならではのキャラクター設定
『キングダム』における信は、戦争孤児であり下僕から這い上がった少年という設定です。
しかし史実の李信については、出自の詳細は不明であり、必ずしも下層階級出身だったとは断定されていません。
また、飛信隊のような部隊名や、羌瘣(きょうかい)・河了貂(かりょうてん)といった仲間たちも創作要素です。
一方で、王騎の死後に矛を受け継ぐ展開など、「意志の継承」というテーマは、歴史的な流れとうまくリンクするように構成されています。
実際の戦歴との比較
史実の李信が関与した最大の戦いは「楚への遠征」です。
彼は20万の兵を率いて項燕の軍に挑みましたが、戦略的に敗北します。
この敗戦により秦王政(後の始皇帝)は、王翦・蒙武の連合軍を投入し、楚を攻略しました。
このエピソードは、物語後半でどのように描かれるのか、多くの読者が注目しています。
信というキャラクターが持つ“創作の意義”
フィクションだからこそ表現できる「成り上がり」
歴史的には、李信の詳細な人物像や性格の記録はほとんど残っていません。
その空白を、『キングダム』は“フィクション”として大胆に埋めています。
信の「仲間を大切にする心」「まっすぐな正義感」「努力で道を切り開く姿勢」は、現代の読者が共感できる主人公像として設計されています。
史実と創作のバランスが作品の魅力
完全な史実通りではないからこそ、物語としての面白さが生まれています。
特に信と政(始皇帝)の関係性、飛信隊の絆、王騎からの継承──これらはすべて「歴史の枠を越えたドラマ」として多くのファンを惹きつけています。
まとめ|「信」は史実と創作の交差点にいる
『キングダム』の主人公・信は、実在の将軍・李信をモデルにしたキャラクターです。
史実と異なる点も多いものの、その存在には確かに「実在の痕跡」があります。
そしてフィクションとして描かれる信の物語は、現代を生きる私たちにも「努力と成長」の力を届けてくれます。
歴史を土台にした創作だからこそ、
信というキャラクターは、ただの“過去の人”ではなく、
今も私たちの心を動かす“生きた存在”になっているのです。
これから『キングダム』が描く“李信将軍のその後”にも注目しながら、物語を楽しんでいきましょう。
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