はじめに｜「なぜ王騎は死ななければならなかったのか？」
『キングダム』を語るうえで、王騎の死は避けて通れない衝撃の出来事です。
圧倒的な強さを誇った王騎が、なぜ龐煖に敗れたのか。
本当に龐煖が王騎を超えていたのか。
そして、王騎はあの戦いに勝つ気がなかったのか。
この記事では、その「死の真相」を、戦術・心理・そして摎との因縁という3つの視点から読み解いていきます。
戦術的には「勝てた戦」だった？
まず注目すべきは、王騎が趙軍との戦いを「正面突破」で進めた点です。
彼の読み通り、蒙武による別動隊は機能し、李牧の策もある程度見抜いていました。
それでも龐煖との一騎討ちで命を落とした──。
つまり、「戦争」には勝てたが、「個の戦い」では敗れたというのが正確な見方です。
王騎の敗北は、兵力や布陣の問題ではなく、“龐煖という異質な存在”に対して、戦い方を変えなかったことに起因しているともいえます。
龐煖の“執念”に引きずり込まれた王騎
龐煖はただの武人ではありません。
彼にとって王騎は、過去に自らが殺した摎の“伴侶”であり、自身の信念を肯定させるための「最後の壁」でもありました。
龐煖はこの戦場で、王騎に勝つことで「武神」の完成を証明しようとしていたのです。
そして王騎は、そんな龐煖の執念をあえて受け止めにいった──。
もし王騎が安全策を取っていれば、討たれずに済んだ可能性は十分にあります。
しかし彼は、龐煖の執念に真正面から応え、そして命を賭してその“限界”を示しました。
摎との因縁が生んだ“覚悟”
王騎にとって龐煖は、「摎を奪った男」であり、「最後に超えるべき相手」でもありました。
あの戦いの中で、王騎が見せたあの静かな微笑み──。
それは、復讐の炎ではなく、「終わりを迎える覚悟」が宿った表情だったように思えます。
摎の矛を握りしめながら、王騎は“戦いの意味”を問い続けていたのかもしれません。
そして、信に矛を託すその瞬間まで、戦場に摎の魂を背負っていたのだと感じさせられます。
王騎の死に“敗北感”はなかった
王騎は、敗れてなお「将軍としての役割」を果たしました。
彼はあの矛に「信じる力」も、「戦いの意志」も、「次世代への希望」も託して死んでいきます。
龐煖に討たれた瞬間、彼はこう言いました。
「私の見る夢の続きを…お前たちに託します」
この言葉からもわかるように、王騎は敗北を受け入れたのではなく、“自らの役目を終えた”のです。
まとめ｜王騎の死は「勝ち負け」ではなく「意志の継承」だった
王騎が龐煖に敗れたのは、戦術的なミスでも、力の差でもなく──
龐煖の“狂気とも言える執念”を受け止め、次の時代へバトンを渡すための選択だった。
そしてその死によって、信が矛を受け取り、王騎の意志を引き継いでいく。
王騎は、武神に敗れて死んだのではなく、
“人の力を信じる将軍”として、
戦場に最期の花を咲かせたのです。
それは、単なる死ではなく、「希望の託宣」だったのかもしれません。
コメント