『マレフィセント』「真実の愛」はなぜ王子のキスではなかったのか?

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2014年に公開されたディズニー映画『マレフィセント』は、アニメ版『眠れる森の美女』の物語を、大胆かつ現代的な視点から描き直した作品です。その最も革新的な点は、物語の結末、すなわち「真実の愛のキス」の定義を完全に覆したことです。

なぜ、オーロラ姫を深い眠りから目覚めさせたのは、運命の相手であるフィリップ王子ではなく、呪いをかけた張本人であるマレフィセントだったのでしょうか?そこには、愛の多様性を描く、現代的なメッセージが込められていました。
この記事ではアニメ版との大きな違いである『真実の愛』について考察していきたいと思います。


アニメ版「真実の愛」:ロマンチックな運命の愛

アニメ版『眠れる森の美女』における「真実の愛」は、ロマンチックな運命の愛でした。

  • 運命の相手: オーロラ姫とフィリップ王子は、互いの素性を知らずとも、一目見た瞬間に恋に落ち、その愛は呪いを解く力となります。
  • 物語の役割: この愛は、悪の魔法に打ち勝つための「究極の力」として描かれ、観客に「運命の人と出会うこと」が幸せであるというメッセージを伝えました。

これは、古典的なおとぎ話の王道であり、多くの人が考える「真実の愛」の形でした。

実写版「真実の愛」:血の繋がらない「母の愛」

しかし、実写版『マレフィセント』は、この古典的な定義を根底から覆します。フィリップ王子のキスはオーロラ姫を目覚めさせず、物語は一度、絶望的な状況に陥ります。そして、呪いを解いたのは、マレフィセントがオーロラ姫の額に与えた、涙とともにあるキスでした。

このシーンは、「真実の愛」の定義を、以下のように拡張しました。

  • 愛の多様性: 血の繋がりや、恋愛関係だけが「真実の愛」ではないことを示しました。マレフィセントがオーロラ姫を愛した感情は、まるで親が子を思うような「母性的な愛」でした。
  • 愛の力: マレフィセントは、オーロラ姫の成長を見守る中で、無意識のうちに愛を育んでいました。彼女のキスは、その愛が本物であると自覚した瞬間に放たれたものであり、自身の呪いをも打ち消すほどの強大な力を持っていたのです。

まとめ:『マレフィセント』が問い直した「真実の愛」

実写版『マレフィセント』は、「真実の愛」が、ロマンチックな恋愛関係だけでなく、親子、家族、友人など、さまざまな形で存在することを私たちに教えてくれました。

それは、現代社会が抱える愛の多様性や、新しい家族のあり方を反映したメッセージであり、この作品が単なるリメイクではない、革新的な傑作である理由の一つと言えるでしょう。マレフィセントがオーロラ姫を救ったのは、愛が憎しみを凌駕するという、希望に満ちた真実を証明するためだったのです。

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