『沈黙の艦隊』なぜ速水副長は女性で配役されたのか?海江田と対峙した「もう一人の理性」

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2025年9月26日公開の最新作が話題の『沈黙の艦隊』。この物語は、海江田四郎が指揮する「やまと」と、深町洋が率いる海上自衛隊の「たつなみ」が繰り広げる、壮絶な戦いを描きます。この対決を語る上で欠かせないのが、水川あさみが演じた「たつなみ」の副官、速水です。

原作では男性だったこのキャラクターが、なぜ映画版で女性になったのでしょうか?この性別の変更には海江田の思想に対峙する「もう一人の理性」として、彼女を描くという深い意図が込められていました。


映画版における速水副長の役割

速水は、深町艦長の右腕として、冷静な判断力と卓越した操艦能力を持ちます。彼女は深町が海江田への個人的な感情に揺れる場面でも、常に冷静沈着なプロフェッショナルとして振る舞い、任務を遂行しました。

彼女の存在は、海江田の掲げる「理想」に対し、日本の「国」としての正義や倫理を代表するものです。速水は海江田の行動を理解しようとしながらも、彼のやり方を決して容認しませんでした。


なぜ「女性」として描かれたのか?二つの深い意図

速水副長が女性として描かれたことには、以下のような意図が隠されています。

意図①:男社会である「戦争」への異質な視点

潜水艦という、閉鎖的で男性中心的な軍事空間において、速水は異質な存在です。彼女は、この男社会で感情的に動くことなく、あくまでプロフェッショナルとして任務を遂行します。

この設定は、戦争や軍事という、ともすれば感情的になりがちなテーマに対し、**「理性」と「客観性」**という視点を持ち込むことを可能にしました。彼女の冷静な視点は、観客が海江田と深町の対立を、感情ではなく、論理的に評価するための重要なフィルターとして機能しています。

意図②:海江田の思想をより深く描くための「対立軸」

速水は、海江田の思想を理解しようとしながらも、彼とは異なる立場から「正義」を追求します。彼女は、海江田の行動がもたらす悲劇や犠牲を冷静に分析し、その危険性を深く理解している人物です。

速水が女性であることで、海江田と深町という二人の男性リーダーの「感情」的な対立に対し、「理性の声」として機能しています。彼女の存在は、物語に奥行きを与え、海江田の孤独な思想が、いかに理解されがたいものであるかをより鮮明に描き出しています。


まとめ

速水副長の性別変更は、映画版『沈黙の艦隊』が単なる原作の再現に留まらず、現代的な視点から物語を再構築しようとした制作者の意図の表れです。

彼女の存在は、海江田の哲学に対峙する「もう一人の理性」として作品に深みと緊張感をもたらしているのです。

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