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『時をかける少女』BGMが切ない理由は?吉田潔のピアノ曲と奥華子「変わらないもの」の役割

エンタメ

細田守監督の『時をかける少女』は、ただの青春SF映画ではありません。その感動的なストーリーを陰で支え、観客の涙腺を緩ませるのが、吉田潔氏による繊細なピアノBGMと、奥華子氏の珠玉の楽曲です。

特に、作中で繰り返されるいくつかのピアノ曲と挿入歌は、主人公・真琴の「一瞬のきらめき」と「タイムリープがもたらす孤独」を見事に表現しています。

この記事では、映画の感動を深くする主要なBGMの役割と、それが物語に与える意味について考察します。


映画の基調となるピアノBGM:「時間」と「日常」の表現

映画のほとんどのシーンで使用されている吉田潔氏のBGMは、ピアノを基調とした、シンプルでありながら感情的なメロディが特徴です。

夏空(オープニングテーマ)

この曲は、真琴たちの「何気ない日常の美しさ」を象徴しています。爽やかで軽快なメロディは、真琴がタイムリープ能力を得る前の、失うことのない「今」の尊さを表現しています。日常の喧騒からタイムリープという非日常へ誘う、映画の入り口として機能しています。

スケッチ

真琴、千昭、功介の3人の和やかな日々を彩る楽曲です。この曲が流れるのは、主にタイムリープを自分の欲望のために気楽に使っている初期のシーンです。ピアノが奏でる軽やかなリズムは、真琴の無邪気さと、まだ「時間の重さ」を知らない無責任さを象徴しています。

少女の不安

真琴がタイムリープを使いすぎて事態が複雑化したり、千昭との関係に悩んだりするシーンで流れる、切なさと緊迫感のあるピアノ曲です。この曲は、タイムリープがもたらす「過去を変えることの代償」や、真琴が背負い始めた「時間の倫理」という、物語の影の部分を表現する役割を担っています。


決定的な瞬間に流れる「変わらないもの」と「ガーネット」

奥華子氏の楽曲は、物語の感情的なクライマックス、特に恋愛と別れのシーンにピンポイントで挿入され、観客の心を深く揺さぶります。

変わらないもの(挿入歌)

この曲が流れるのは、真琴と千昭が花火大会に行くシーンなど、二人の関係が最も親密になる瞬間です。

  • 歌詞の意味: 歌詞に登場する「この気持ちが続けばいいのに」というフレーズは、タイムリープという「終わりのある力」を持った真琴の切ない願いを代弁しています。
  • 楽曲の役割: 過ぎ去る夏と、永遠ではない時間を背景に「時間の中にあって、それでも変わらずにいるたった一つの想い(千昭への愛)」を際立たせる役割を果たしています。

ガーネット(主題歌)

映画のエンドロールで流れるこの曲は、「未来で待ってる」という千昭の告白と、真琴の「すぐに駆けつける」という決意の直後に響き渡ります。

  • 結末の余韻: 切なくも力強いメロディは、叶わない恋の哀しみと、未来へ踏み出す希望の両方を表現しており、観客に深い感動の余韻を残します。

映画の秘密を語る「クラシック」の存在

吉田潔氏のオリジナル曲に加え、作中ではJ.S.バッハの『ゴールドベルグ変奏曲』から「アリア」などのクラシック曲が使用されています。

これは、真琴の叔母である芳山和子が勤める美術館のシーンで主に使われます。クラシック音楽は、「普遍性」や「時の流れ」を象徴する役割を持っています。

  • 和子さんが持つ「過去のタイムリープ経験」や、千昭が未来から見に来た「失われた絵」といった、個人的な感情を超えた時間軸の概念を表現し、物語に奥深さを与えています。

まとめ

『時をかける少女』のBGMは、単なる背景音楽ではありません。

吉田潔氏のピアノ曲は、真琴の日常と不安を繊細に描き出し、奥華子氏の楽曲は、一瞬の愛と永遠の別れという、物語の核心的な感情を増幅させています。これらの音楽の力が、観客に「限られた時間の中で、何を大切にするのか」という青春の普遍的なテーマを深く問いかけ、映画を不朽の名作たらしめているのです。

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