NHK連続テレビ小説『ブラッサム』第3週「化粧と、初恋」では、主人公・葉野珠の恋心が思わぬ形で島村先生に伝わる展開が予定されています。
珠が島村先生への思いをつづった紙を学校で落とし、それを拾った生徒が島村先生に渡してしまうのです。
好きな人への気持ちを、本人に知られてしまうかもしれない。しかも、そのきっかけが自分の教え子だというのですから、珠にとっては驚きの出来事でしょう。
実は、このエピソードにはモデルとなった作家・宇野千代の実話があります。
宇野千代は代用教員だった頃、好きになった同僚教師への恋文を、自分の教え子に運ばせていたのです。
しかも、恋文を運んだ生徒が誰だったのか、なぜその生徒に頼んだのかまで記録が残っています。
珠の恋文が島村先生に渡る理由と、宇野千代の大胆な恋愛エピソードを詳しく見ていきましょう。
『ブラッサム』珠の恋文を生徒が島村先生に渡したのはなぜ?
『ブラッサム』10月14日放送予定の第13回では、珠が新任教師・島村辰彦に次第に惹かれていく様子が描かれます。
島村先生は、珠が根気強く生徒と向き合っている姿を認めてくれる人物です。
教師としての考え方にも共通点が多く、二人はすぐに打ち解けていきます。
そんな中、珠は島村先生への秘めた思いを紙に書きつづります。
ところが、その紙を学校で落としてしまいました。
拾った生徒は、偶然近くにいた島村先生に渡してしまいます。
ここで重要なのは、珠が生徒に恋文を届けるよう頼んだわけではないということです。
放送前に公開されたあらすじでは、珠が落とした紙を生徒が拾い、島村先生に渡す流れになっています。
つまり、珠の気持ちが島村先生に伝わるのは、本人が意図していなかった出来事なのです。
では、モデルとなった宇野千代の場合はどうだったのでしょうか。
宇野千代は本当に生徒に恋文を運ばせていた!
宇野千代は1914年(大正3年)、17歳で山口県岩国の川下尋常小学校の代用教員になりました。
翌1915年には、新しく赴任してきた男性教師に強く惹かれるようになります。
宇野千代は自分の気持ちを隠しておくだけでは満足できず、積極的に相手へ近づいていきました。
その行動の一つが、生徒に恋文を運ばせることだったのです。
授業中に好きな先生への手紙を書き、教え子に持たせて届けさせたという話が、宇野千代の回想にも残っています。
現代の学校では考えにくい行動ですが、当時の宇野千代は恋愛に対して非常に積極的だったようです。
ただし、宇野千代が生徒を使いにしたのは事実でも、すべての手紙が愛の告白だったとは限りません。
相手の下宿に食べ物を持っていくことを知らせるような、日常的な内容の手紙もあったと伝えられています。
それでも、好きな相手との私的なやり取りに生徒を使っていたことは、現在の感覚では驚かされますね。
恋文を運んだ生徒は誰?実名まで判明していた
宇野千代の恋文を運んだ生徒については、興味深い記録が残っています。
宇野千代の作品では、恋文を運ぶ生徒が別の名前で登場することがあります。
しかし、歴史研究家・刑部芳則氏の調査によって、実際に恋文を運んだのは三吉勇雄という生徒だったことが分かりました。
三吉勇雄は、宇野千代が受け持っていた学級の級長でした。
後年、川下小学校のクラス会で、自分が先生の恋文を運んでいたことを振り返ったという記録が残されています。
この話は『川下小学校百年のあゆみ』にも紹介されています。
さらに三吉勇雄は、後に岩国市議会議長を務めた人物でもありました。
若い頃に先生の恋文を届けていた生徒が、後に地元で重要な役職に就いていたというのも興味深いですね。
宇野千代はなぜ三吉勇雄に恋文を頼んだ?
では、宇野千代はなぜ三吉勇雄に恋文を運ばせたのでしょうか。
この疑問については、宇野千代自身が理由を語っています。
宇野千代の著書『一ぺんに春風が吹いて来た』によると、三吉勇雄を選んだのは、一番頼みやすかったからだったそうです。
特別な計画があったわけではなく、普段から接している級長の三吉に頼むのが自然だったのでしょう。
ただ、教師が生徒に個人的な恋文を届けさせることには、やはり驚かされます。
宇野千代にとっては、好きな先生へ手紙を届けることが、それほど大切だったのかもしれません。
宇野千代が恋文を送った相手の先生は誰?
宇野千代が恋をした相手は、同じ小学校に赴任してきた男性教師でした。
宇野千代の自伝的小説などでは、「佐伯」「玉田」「篠田」など、作品によって異なる名前で登場しています。
そのため、長い間、実際の相手が誰だったのかはっきりしていませんでした。
しかし、刑部芳則氏が岩国市で行った調査によって、実在の人物は玉田精磨(たまだ・せいま)という教師だったことが明らかになっています。
玉田精磨は1915年3月31日付で、川下尋常高等小学校の訓導として採用されました。
宇野千代は3年生の学力が低い方の学級を担当し、玉田先生は学力が高い方の学級を受け持っていたとされています。
玉田先生は色白の美青年だったと伝えられており、宇野千代はその容姿にも惹かれたようです。
同じ学校で働きながら、教師として接するうちに、宇野千代の思いは強くなっていったのでしょう。
『ブラッサム』島村辰彦は玉田精磨がモデル?
『ブラッサム』で珠が惹かれる島村辰彦は、工藤阿須加さんが演じています。
島村は広島の師範学校を卒業し、岩国の小学校に赴任してきた教師です。
珠の教育に対する熱意を認め、二人は教師として共感し合うようになります。
宇野千代が新任の同僚教師に恋をしたという史実と重なるため、島村辰彦には玉田精磨の人物像が反映されていると考えられます。
ただし、島村辰彦はドラマの登場人物であり、実在した玉田精磨とすべての設定が同じとは限りません。
特に恋文のエピソードには、すでに違いが見られます。
宇野千代は自分から生徒に手紙を運ばせていましたが、ドラマでは珠が落とした紙を生徒が拾い、島村先生に渡すという展開です。
実際の出来事を参考にしながら、ドラマでは別の形で描いているのでしょう。
宇野千代の恋文には何が書かれていた?
宇野千代が玉田先生に送っていた手紙のすべての内容が、現在まで残されているわけではありません。
ただし、宇野千代の回想には、相手の下宿へ食べ物を持っていくことを知らせる手紙を、生徒に届けさせたという話があります。
宇野千代は、好きな相手に対して自分から行動する女性でした。
手紙を送るだけでなく、食べ物を作って相手の下宿へ持っていくこともあったそうです。
当時は電話が今ほど普及しておらず、もちろん携帯電話やメールもありません。
手紙は、相手に自分の気持ちや用件を伝える大切な手段でした。
宇野千代が何度も手紙を届けようとしたのも、玉田先生と少しでもつながっていたいという思いがあったからではないでしょうか。
一方、ドラマの珠が書いた紙には、島村先生への秘めた思いがつづられています。
どのような言葉が書かれているのか、島村先生が読んだ後にどう反応するのかは、実際の放送で注目したいところです。
なぜ恋文を生徒に運ばせることが問題になる?
宇野千代の行動は、当時としても大胆なものだったと考えられます。
教師は子どもたちに勉強を教えるだけでなく、生活態度や礼儀を指導する立場でした。
その教師が授業中に私的な手紙を書き、生徒に届けさせていたのです。
現在なら、授業時間を個人的な用事に使うことや、生徒を私的な使いにすることは問題になるでしょう。
大正時代も教師の品行や学校の規律は重視されていました。
特に女性教師には、慎ましく振る舞うことが期待されていた時代です。
宇野千代の積極的な恋愛行動は、周囲の教師や地域の人々にとって、目立つものだったのかもしれません。
ただし、恋文を生徒に運ばせたことだけが、その後の学校での問題につながったと断定することはできません。
当時の教師同士の恋愛には、学校や社会の価値観が深く関わっていました。
珠の恋文は島村先生との関係を変えるきっかけになる?
ドラマで珠が島村先生に惹かれるのは、見た目だけが理由ではありません。
島村先生は、珠が生徒に根気強く向き合う姿を認めてくれました。
教師として同じ考えを持ち、自分の努力を理解してくれる相手に、珠は次第に心を開いていきます。
そんな相手に、自分の秘めた思いを知られてしまうかもしれないのです。
珠にとっては恥ずかしく、戸惑う出来事でしょう。
しかし、これまで胸の中にしまっていた気持ちが相手に伝わることで、二人の関係が変化する可能性もあります。
島村先生が珠の気持ちをどう受け止めるのか。
また、珠が思いを知られた後、どのように振る舞うのか。
恋文の場面は、珠の初恋が動き始める重要なきっかけになりそうです。
まとめ
『ブラッサム』では、珠が島村先生への思いをつづった紙を落とし、それを拾った生徒が島村先生に渡す展開が予定されています。
一方、モデルとなった宇野千代は、実際に教え子を使って好きな先生へ手紙を届けさせていました。
恋文を運んだ生徒は、級長の三吉勇雄です。
宇野千代が三吉に頼んだ理由は、本人の回想によると、一番頼みやすかったからでした。
恋文の相手は、実在した教師・玉田精磨です。
ドラマと史実では手紙が相手に届く経緯が異なりますが、どちらにも若い宇野千代の情熱的な恋愛が反映されているように感じられます。
珠の恋文を受け取った島村先生がどのような反応を見せるのか、二人の関係がどう変わっていくのかにも注目したいですね。
『ブラッサム』関連記事
珠と島村辰彦の恋愛関係や、モデルとなった教師についてはこちらで詳しく解説しています。
▶ 『ブラッサム』珠と島村辰彦は恋愛関係になる?宇野千代が恋した教師の正体を考察
珠が代用教員になった経緯と、宇野千代が教師として働き始めた理由はこちらをご覧ください。
▶ 『ブラッサム』珠はなぜ教師になった?宇野千代が教員になった経緯と理由
珠が教頭から化粧を注意された理由と、大正時代の女性教師に求められた身だしなみについても解説しています。

コメント