狛治(はくじ)=猗窩座の原点にあった“父の存在”
『鬼滅の刃』で上弦の参として登場する猗窩座(あかざ)は、人間時代の名を「狛治(はくじ)」といい、過酷な人生を歩んできました。その人生の出発点とも言えるのが、病弱な父親との関係です。父との絆、そしてその最期が、彼の運命を大きく左右したのです。
病弱な父を支えるため、罪を重ねる少年時代
狛治の父は重い病を患い、働くことができませんでした。狛治は父の薬代を稼ぐために、やむなくスリを繰り返す日々を送っていたのです。まだ幼い彼にとって、それは“家族を守るための行動”でしたが、同時に「罪悪感」とも常に背中合わせでした。
父親想いの優しい少年なのですが、犯罪を犯す以外に生活のすべはなかったのでしょう。
捕まり、激しい折檻を受けても全く堪えることなく父親のためにスリを繰り返す。
愛する父親を守るために必死でした。
父の自死──「まっとうに生きてくれ」の遺言
ある日、父は狛治の行動を知り、自ら命を絶ちます。遺書には「自分のために罪を重ねてほしくない。まっとうに生きてくれ」と書かれていました。この出来事は、狛治にとって人生初の“喪失”であり、取り返しのつかない後悔として深く刻まれました。
父の死が猗窩座の心に残した傷
父の死は、狛治に「正しく生きよう」と決意させた一方で、心の奥に消えない喪失感と罪悪感を残しました。のちに慶蔵や恋雪との出会いによって一度は立ち直りますが、またしても大切な人を失ったとき、心の中の傷は癒えるどころか鬼への変貌を引き起こす引き金となってしまいます。
“強さ”への執着は父を守れなかった弱さの裏返し
猗窩座が鬼となってから「弱者を嫌う」「強さこそが正義」と繰り返すのは、父を守れなかった過去の自分への怒りに由来しています。彼にとって“強さ”とは、「もう二度と大切な人を失わないための力」であり、守れなかった父の存在が、その信念の核となっているのです。
まとめ:猗窩座の過去に見る“父と息子”の切ない絆
猗窩座というキャラクターの魅力は、ただ強い鬼であるというだけではなく、人間としての弱さと喪失の痛みを背負っている点にあります。その原点となった父親の存在は、彼の人生を根底から揺るがすものであり、彼の選択や執着のすべてが、そこに繋がっているのです。
哀しみを背負って戦う猗窩座の姿に、多くの読者が共感を抱くのは、この“守れなかった者への想い”が、どこか普遍的なテーマだからかもしれません。
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