NHK朝ドラ『ブラッサム』で、葉野珠がついに結婚しました。
ところが新婚生活は、わずか3日。
父・清治が決めた相手のもとへ嫁いだ珠は、結婚生活に耐えられず家を飛び出し、葉野家へ戻ってきます。
「いくらなんでも3日は早すぎる!」と思った人もいるでしょう。
ところが珠のモデルとなった宇野千代の人生を調べてみると、この展開にはかなりはっきりとした史実のモデルがあります。
宇野千代も14歳のとき、父が決めた相手のもとへ嫁ぎ、わずか10日ほどで実家へ戻っているのです。
さらに興味深いのが、その後。
宇野千代がのちに正式に結婚した男性は、14歳で嫁いだ相手の「弟」でした。
『ブラッサム』でも、珠の結婚相手の弟がどこか好意的に描かれているのが気になります。
今回は、珠の「3日で家出」と宇野千代の最初の結婚を比較しながら、宇野千代は何歳で誰と結婚したのか、そしてなぜ「最初の夫」が二人いるように見えるのかを整理します。
『ブラッサム』珠は結婚するも3日で家出
珠の結婚は、自分で望んだものではありませんでした。
縁談を決めたのは父・清治です。
珠自身にはまだ結婚への迷いがありましたが、父に逆らうことができず、嫁ぐことになります。
ところが始まった結婚生活は、珠が思い描いていたものとは違いました。
そして珠は、たった3日で嫁ぎ先から逃げ出します。
家へ戻った珠を待っていたのは、当然ながら父・清治です。
父が決めた縁談を娘が自分から壊して戻ってきたのですから、これまでの清治なら激怒してもおかしくありません。
しかし、この頃の清治にはすでに病の影が見え始めています。
珠が父の決めた人生から初めて大きく外れる出来事と、清治との別れが近づいていることが重なっているのです。
第2週のタイトル「父からの、解放」を考えても、この3日間の結婚は珠にとって大きな転換点だったのでしょう。
モデル・宇野千代も14歳で父が決めた相手に嫁いでいた
実は「結婚してすぐ実家へ戻る」という展開は、ドラマだけの創作ではありません。
宇野千代も非常によく似た経験をしています。
宇野千代は1897年、山口県岩国に生まれました。
そして14歳のとき、父・宇野俊次が決めた相手のもとへ嫁ぐことになります。
相手は従兄にあたる藤村亮一でした。
まだ14歳です。
現在の感覚では驚いてしまいますが、明治末期の出来事です。
しかも千代自身が強く望んだ結婚ではありません。
父が決めた縁談に従って嫁いだという点も、『ブラッサム』の珠と重なります。
宇野千代も約10日で実家へ戻っていた
さらに驚くのはここからです。
藤村亮一のもとへ嫁いだ宇野千代は、そのまま妻として暮らし続けたわけではありません。
わずか10日ほどで実家へ戻っています。
ドラマでは珠が3日。
史実の宇野千代は約10日。
日数こそ変更されていますが、
「父が決めた相手へ嫁ぐ」
「ところが結婚生活は長く続かない」
「短期間で実家へ戻る」
という大きな流れはよく似ています。
『ブラッサム』では、宇野千代の人生をそのまま再現するのではなく、史実にある出来事をドラマとして再構成していることが分かります。
宇野千代の「最初の夫」は藤村亮一ではない?
ここで少しややこしい問題が出てきます。
宇野千代について調べると、14歳で藤村亮一に嫁いだという話がある一方、経歴では別の男性が「最初の夫」として紹介されていることがあります。
その男性が藤村忠です。
「では藤村亮一との結婚は何だったの?」と思いますよね。
14歳で嫁いだ藤村亮一との生活はごく短期間で終わりました。
一方、後に千代が自ら選び、正式な夫となったのが藤村忠です。
そのため宇野千代の結婚歴では、藤村忠が最初の夫として扱われることがあります。
そして、この二人には非常に興味深い関係があります。
最初に嫁いだ藤村亮一と後に結婚する藤村忠は兄弟
藤村忠は、14歳の千代が最初に嫁いだ藤村亮一の弟です。
ここが宇野千代の最初の結婚を知るうえで、一番驚くところではないでしょうか。
父が決めた兄・亮一のもとへ嫁ぐ。
しかし約10日で実家へ戻る。
その後、弟・忠と親しくなり、やがて今度は自分の意思で忠と人生をともにすることになります。
つまり宇野千代にとって、兄・亮一との短い結婚と、弟・忠との結婚はまったく意味が違います。
一つ目は「父が決めた結婚」。
もう一つは「自分が選んだ結婚」。
この違いは、『ブラッサム』という物語を考えるうえでも重要になりそうです。
宇野千代は藤村忠と何歳で結婚した?
宇野千代はその後、藤村忠と親しくなります。
19歳頃には忠との生活が始まり、1919年、千代が22歳のときに正式に結婚しました。
二人は北海道へ渡り、札幌で生活します。
14歳で父の命令によって嫁いだ千代と、20代になって自分で相手を選んだ千代。
同じ「結婚」でも、その意味は大きく違います。
しかも相手が兄弟という、非常に印象的な経緯です。
宇野千代が後に何度も結婚や離婚を経験し、自分の感情に正直に生きていく女性になることを考えると、14歳で経験した最初の嫁入りは、その後の人生とは対照的な出来事だったともいえます。
『ブラッサム』で結婚相手の「弟」が好意的なのは偶然?
ここで『ブラッサム』へ戻りましょう。
珠が嫁いだ先では、結婚相手だけでなく、その弟も登場しています。
しかも弟は、珠に対して比較的好意的な人物として描かれていました。
史実を知らなければ、そのまま見過ごしてしまいそうな描写です。
しかし宇野千代の最初の結婚を知ると、一気に気になる人物になります。
宇野千代は兄・藤村亮一のもとから約10日で実家へ戻り、その後、弟の藤村忠と結婚しています。
『ブラッサム』がこの史実を今後どこまで取り入れるのかは、現時点では分かりません。
珠がドラマでも結婚相手の弟と結ばれると決まったわけではないので、そこは分けて考える必要があります。
それでも、モデルとなった宇野千代の人生を踏まえて見ると、わざわざ「夫の弟」を登場させ、珠に対して好意的な印象を持つ人物として描いたことには注目したくなります。
もしかすると、この弟はこれから珠の人生にもう一度関わってくる人物なのかもしれません。
珠の「3日で家出」はわがままではなく最初の一歩?
珠は父・清治に逆らうことが苦手な少女でした。
自分が納得できないことでも、「お父様が決めたことだから」と受け入れてしまいます。
そんな珠が、父の決めた結婚からわずか3日で逃げ出しました。
これは珠にとって、かなり大きな行動です。
父の命令に従うことより、自分が「ここにはいられない」と感じた気持ちを優先したからです。
前回、錦帯橋についての記事でも触れましたが、『ブラッサム』では「自分で決めた道へ最初の一歩を踏み出すこと」が重要なテーマとして置かれています。
そう考えると、3日で嫁ぎ先を飛び出したことも失敗ではありません。
珠が初めて「父が選んだ人生」から降り、「自分が選ぶ人生」へ向かおうとした一歩だったのではないでしょうか。
「父からの、解放」は結婚にも表れている
第2週のタイトルは「父からの、解放」。
父・清治の死だけを意味しているようにも見えますが、珠の結婚まで含めて考えると、もっと早い段階から「解放」は始まっています。
清治が決めた相手と結婚するところまでは、これまでの珠です。
しかし、その生活から逃げ出したところから珠は変わり始めます。
そして史実の宇野千代も、父が決めた藤村亮一との生活からわずか10日ほどで戻り、後には自分で選んだ藤村忠と結婚しています。
父に人生を決められていた少女が、自分で相手を選ぶ女性へ。
この変化こそ、『ブラッサム』がこれから描いていく珠の成長なのでしょう。
父から解放されるとは、単に清治がいなくなることではありません。
「父が決めたから」ではなく、「私はどうしたいのか」で人生を決めること。
珠の3日間の結婚は、その始まりだったように思えます。
まとめ|珠の3日婚には宇野千代の「10日婚」というモデルがあった
『ブラッサム』で珠は父・清治が決めた相手と結婚しますが、わずか3日で嫁ぎ先から飛び出します。
この展開には、モデルとなった宇野千代の実体験とよく似た部分があります。
宇野千代も14歳のとき、父・俊次が決めた従兄・藤村亮一のもとへ嫁ぎましたが、約10日で実家へ戻っています。
そして後に千代が正式に結婚するのが、亮一の弟・藤村忠でした。
14歳の嫁入りを最初の結婚と見る場合と、22歳で正式に結婚した藤村忠を最初の夫とする場合があるため、宇野千代の「最初の結婚」が少し分かりにくくなっているのです。
そして『ブラッサム』でも、珠の結婚相手の弟が好意的に描かれているのは気になるところです。
史実通りの展開になるとは限りません。
それでも、宇野千代が「父に決められた兄との結婚」から離れ、後に「自分で選んだ弟との結婚」へ進んだことを知っていると、あの弟の登場がまったく違って見えてきます。
珠が3日で家出したことは、結婚の失敗ではなく、自分の人生を自分で選ぶための最初の反抗だったのかもしれません。
これから珠と「夫の弟」の関係がどう描かれるのか、注目したいところです。
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