ジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』はイギリスの作家メアリー・ノートンによる児童文学『床下の小人たち』が原作です。
映画は原作の魅力を大切に描いていますが、上映時間の都合や映画としてのエンターテインメント性を高めるため、いくつかの大きな変更やアレンジが加えられています。
この記事では映画版『借りぐらしのアリエッティ』と原作小説『床下の小人たち』の主な違いや、改変された理由について分かりやすく解説します。
舞台設定(1950年代のイギリス ➔ 現代の日本)
原作と映画で最も分かりやすい違いは「物語の舞台」です。
- 原作: 1950年代初頭のイギリスの古い邸宅
- 映画: 2010年代の東京都小金井市付近(和洋折衷の古いお屋敷)
原作では古き良きイギリスの田舎町が舞台となっており、小人たちが借りてくる道具も紅茶の缶やビクトリア調の小物など、洋風でアンティークなものが中心でした。
一方、映画版では舞台を日本に移したことで、畳や障子、庭に生い茂る日本の四季折々の植物など、より親しみやすく情緒豊かな映像表現へとアレンジされています。
登場人物の設定や人間関係
キャラクターの設定や人間関係にも、映画独自の大きなアレンジが加えられています。
翔(少年)の設定
映画の翔は心臓の病気を患っており、「死」を意識した儚い少年として描かれています。彼が病気であるという設定は、アリエッティとの切ない交流や「命の尊さ」というテーマを強調するための映画オリジナルの要素です。
原作の少年にはそのような重い病気の設定はなく、単に「インドから療養のために伯母の家に預けられている少年」として登場します。
ハルさん(家政婦)の描かれ方
映画のハルさんは、小人を捕まえることに異常な執着を見せる「悪役ポジション」として描かれています。
原作にも同様の家政婦(ドライパー夫人)が登場しますが、彼女が小人を捕まえようとする動機は「お屋敷の財産(貴金属など)を盗んでいる犯人を捕まえるため」という現実的な理由でした。映画ではハルさんの好奇心や執着心がより強調され、物語を盛り上げるサスペンス要素となっています。
スピラーのキャラクター
野生の小人スピラーも、映画では言葉数が少なく野性的な少年として描かれていますが、原作ではもう少し流暢に話し、生活感のあるキャラクターとして描かれています。
ドールハウス(ドール用の部屋)の扱い
物語の重要なアイテムである「ドールハウス」の扱いも大きく異なります。
- 映画: 翔がアリエッティたちのために、ドールハウスの豪華なキッチンを勝手に入れ替えてしまい、それが原因で小人たちが危機に陥る
- 原作: 少年とアリエッティはお互いに合意の上で交流し、少年は小人たちに頼まれて様々な家具や小物を運んであげる
映画では「良かれと思ってした行動が相手を追い詰めてしまう」という人間と小人のすれ違いやエゴが強調される演出になりました。
結末(ラストシーン)の展開
映画と原作では、ラストの脱出劇や別れの余韻が大きく異なります。
映画では、ハルさんに捕まった母ホミリーを翔とアリエッティが協力して助け出し、最後は川を下るヤカンの舟で翔に別れを告げて新しい住処へと旅立ちます。疾走感のあるクライマックスと、爽やかで切ない別れが印象的です。
一方、原作のラストはより現実的で厳しく描かれています。家政婦に見つかった小人たちは、害虫駆除の燻煙(煙)によって床下から燻り出されそうになり、間一髪で逃げ延びます。その後、少年もインドへ帰ることになり、アリエッティたちの生存を確認できないまま物語が終わるという、少しミステリアスな余韻を残す結末となっています。
なぜ映画版では設定が変更されたのか?
これらの変更が行われた最大の理由は、「90分の映画の中でテーマを明確にし、視聴者を惹きつけるため」です。
- 「死」と「生」の対比: 翔に心臓病の設定を追加することで、滅びゆく種族かもしれない小人と、死と向き合う少年の「生のエネルギーの交流」を深く描いた。
- 分かりやすいクライマックス: 母親の救出劇やハルさんとの攻防を入れることで、エンターテインメントとしての緊張感と盛り上がりを作った。
原作の持つ静けさやノスタルジックな雰囲気を活かしつつも、アニメーション映画としてよりドラマチックに再構築されたのがスタジオジブリ版『借りぐらしのアリエッティ』と言えます。
まとめ:原作を読むと映画の理解がより深まる
映画『借りぐらしのアリエッティ』と原作『床下の小人たち』には、舞台設定や結末をはじめ多くの違いが存在します。
映画版の切なくも力強いストーリーはもちろん魅力的ですが、イギリスの伝統的な雰囲気や、よりリアルな小人たちの生活感が描かれた原作小説もまた違った面白さがあります。
違いを比べながら原作を読んでみるのもおすすめです。
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