NHK連続テレビ小説『ブラッサム』で、木村保の母・照子が珠に持ちかけた話には驚かされました。
京都で暮らす保の世話をしてほしいというのです。
しかも、単なる世話役ではありません。照子は、ゆくゆくは保と結婚すればいいとまで言い出しました。
珠は、照子の長男・亨一と結婚して、わずか3日で家を飛び出した女性です。
その亨一は花街の女性と駆け落ちし、今度は珠自身が島村先生との逢引きの噂で仕事を失っています。
そんな珠を、なぜ再び木村家の嫁に迎えようとするのでしょうか。
照子の提案には、珠を助けたい気持ちだけでなく、息子・保の将来や木村家の事情を考えた打算も感じられます。
今回は、照子が珠と保を結婚させたがる理由を、長男の駆け落ち、木村家の評判、保の将来から考察します。
『ブラッサム』照子はなぜ珠と保を結婚させたい?
10月20日放送の第17回で、照子は珠のもとを訪れ、京都へ行かないかと持ちかけました。
京都には、照子の次男・保が暮らしています。
保は第三高等学校に通う学生で、将来は帝国大学への進学も期待される秀才です。
照子はこれまで、時々京都へ出向いて保の身の回りの世話をしていました。
しかし、夫の体調が悪くなり、以前のようには京都へ行けなくなったといいます。
そこで白羽の矢が立ったのが珠でした。
珠が世話係ということかと尋ねると、照子はそれが名目だと認め、将来は保と一緒になればいいと話します。
最初から結婚まで考えていたわけです。
保の世話をしてくれる女性を探しているだけなら、ほかにも方法はあったでしょう。
それでも照子が珠を選んだのは、珠がかつて木村家に嫁いだ女性であり、保とも親しくしているからではないでしょうか。
照子は打算的?珠を選んだ3つの理由
保の世話と将来の結婚を一度に考えている
照子の話を聞いて、まず感じるのは合理的な考え方です。
夫の体調が悪く、京都へ行くことが難しい。
けれど、保には勉学に励んでもらいたい。
それなら、気心の知れた珠に身の回りの世話を任せ、将来は結婚してもらえばいい。
照子にとっては、いくつもの心配事を一度に解決できる提案です。
しかも保は旧制三高に通い、将来を期待されている息子です。
照子自身も、保が帝大に進めば将来は約束されたようなものだと話していました。
保の将来性を、珠に結婚を勧める材料として使っているところにも、照子の打算的な一面が表れています。
珠の悪い噂を知ったうえで話を持ちかけた
照子は、珠が島村先生との逢引きの噂で苦しんでいることを知っていました。
教師を辞めさせられ、新しい仕事もなかなか見つからない珠。
照子はそんな珠を不憫に思っていたと話しています。
京都へ行けば、岩国で広まった噂から離れ、新しい生活を始めることができます。
珠にとっても、決して悪い話ではありません。
ただ、照子は珠が断ると、岩国にいては嫁に行けないとまで言いました。
この言葉には、珠の将来を心配する気持ちと同時に、今の珠にはほかに良い縁談がないだろうという見方も感じられます。
相手の弱い立場を理解したうえで、自分の提案を受け入れさせようとする。
照子の親切には、そんな計算も含まれているように見えました。
保と珠が親しくしていることを知っていた?
珠と保は、保が夏休みで岩国に帰省した際、毎日のように会って話をしていました。
珠にとって保との会話は、苦しい日々の息抜きになっていました。
保が京都へ戻ってからも、二人は手紙をやり取りしています。
保は珠が教師を辞めた事情を知っても、態度を変えませんでした。
周囲の噂に傷ついていた珠にとって、自然体で接してくれる保は貴重な存在だったのでしょう。
照子が二人の親しさをどこまで知っていたかは分かりません。
しかし、保の相手として珠を選んだ背景には、二人が以前から知り合いであることも関係していそうです。
長男・亨一の駆け落ちで木村家の評判も傷ついた?
照子の思惑を考えるうえで、忘れられないのが長男・亨一の存在です。
亨一は役所に勤めていましたが、珠との結婚生活はわずか3日で破綻しました。
もともと花街の女性と親しくしており、その後はその女性と駆け落ちしています。
大正時代の結婚は、本人同士だけでなく、家同士の結びつきという意味も持っていました。
役所勤めの長男が結婚に失敗し、花街の女性と駆け落ちしたとなれば、木村家でも大きな問題になったはずです。
珠が島村先生との恋愛で噂されている一方、木村家も長男の行動によって世間の目を気にする立場になっていた可能性があります。
ただし、木村家や保が実際に近所から悪口を言われている場面は、これまで明確には描かれていません。
ここは照子の行動から考えられる可能性です。
珠との再婚で木村家の縁をつなぎ直したい?
照子が珠を次男の結婚相手に考えたことには、もう一つ興味深い点があります。
珠は、もともと木村家が長男の嫁として迎えた女性です。
亨一との結婚は失敗しましたが、珠自身が木村家とまったく縁のない女性になったわけではありません。
照子にとっては、珠の性格も家族の事情も知っています。
見知らぬ女性を保の結婚相手に迎えるより、安心できる部分があったのでしょう。
さらに、長男の結婚がうまくいかなかった後、今度は次男との縁を結ぶことができれば、木村家と葉野家の関係も続きます。
照子がそこまで計算していたかは分かりませんが、家同士のつながりを重んじる時代ならではの考え方として興味深いところです。
元長男の嫁を次男と結婚させるのは大正時代でも普通だった?
照子の提案に驚いたのは、珠が保の兄・亨一と結婚していたからです。
かつての義理の弟と結婚することになるのですから、現代でも少し複雑に感じる関係ですよね。
大正時代には、結婚を家の存続や親族関係と結びつけて考える価値観が強く残っていました。
そのため、本人同士の恋愛だけでなく、家族の事情を踏まえて縁談が進められることもありました。
ただし、離婚した女性が元夫の弟と結婚することが一般的だったというわけではありません。
当時の民法では、離婚後も姻族関係をめぐる婚姻制限がありました。具体的にどの関係が制限されるかは法令の確認が必要ですが、少なくとも照子の提案を、当時ならごく普通の縁談だったと考えるのは難しいでしょう。
それでも照子は、ためらう様子もなく結婚の話を持ちかけています。
世間体を気にしながらも、自分が良いと思った話は積極的に進めようとする。
そんな照子の大胆さが、この場面にはよく表れていました。
裕福な木村家にとって珠は都合のよい相手だった?
木村家は、経済的に恵まれた家庭だったと考えられます。
長男・亨一は役所勤めで、次男・保は京都の旧制第三高等学校に通っています。
地方から京都の名門校へ進学させるには、学費や生活費を負担するだけの余裕が必要でした。
さらに、照子はこれまで保の暮らす京都へ時々出向いて、身の回りの世話をしていたと話しています。
こうした生活ぶりからも、木村家には一定の経済力があったことがうかがえます。
一方、珠は教師を辞めさせられ、悪い噂のために再就職にも苦労しています。
照子は、保が帝大へ進めば将来は安泰だと考えており、珠にもその話を魅力的に感じてほしかったのでしょう。
保の将来を支えてくれる女性がほしい木村家と、岩国を離れて再出発できる珠。
照子の目には、お互いに利益のある縁談として映っていたのかもしれません。
照子は本当に珠の幸せを考えている?
照子の提案を、すべて自分勝手なものと受け取るのも違うように思います。
珠が噂に苦しんでいることを知り、不憫に思っていたのは確かです。
保の将来性を考えれば、珠にとって良い結婚相手だと考えたとしても不思議ではありません。
ただ、照子が考える幸せと、珠自身が望む幸せは同じではありませんでした。
珠は京都行きの話を断ります。
その理由は、岩国に家族がいるからでした。
珠にとって大切なのは、経済的に恵まれた相手と結婚することだけではありません。
リョウや弟の守との暮らしも、簡単には手放せないものなのです。
照子は保の将来や珠の結婚を考えていましたが、珠が今どんな人生を望んでいるのかまでは、十分に考えていなかったのかもしれません。
珠が照子の縁談を断った理由
照子の提案は、条件だけを見れば魅力的です。
保は旧制三高に通う秀才で、将来は帝国大学への進学も期待されています。
しかも、保は珠の過去を知っても態度を変えず、自然に接してくれる青年です。
岩国で仕事が見つからず、悪い噂に苦しむ珠にとって、京都行きは新しい人生を始める機会にもなります。
それでも珠は、すぐに話を受け入れませんでした。
かつて珠は、父・清治が決めた亨一との結婚でつらい思いをしています。
今回もまた、周囲が良いと考える結婚を、そのまま受け入れることには抵抗があったのではないでしょうか。
保に好意を持っていたとしても、それだけで結婚を決められるわけではありません。
珠には、家族との生活も、自分自身の将来もあります。
照子の提案を断ったことには、周囲の思惑ではなく、自分の意思で人生を選びたいという珠の気持ちが感じられました。
照子は保の気持ちを知っていたのか?
今回の縁談で気になるのは、保自身の気持ちです。
保は珠と再会してから、毎日のように会って話をしていました。
京都へ戻った後も、手紙のやり取りを続けています。
珠が教師を辞めた事情を知っていても、保は彼女を責めませんでした。
照子が二人の様子を知っていたなら、保も珠に特別な気持ちを抱いていると察した可能性があります。
しかし、照子が保本人に結婚の意思を確認したのかどうかは、まだ分かりません。
もし保の気持ちを確かめずに話を進めていたのなら、照子らしい強引さが表れた行動ともいえそうです。
母親が考える息子の幸せと、保自身が望む人生。
この二つが今後どう重なっていくのかも、気になるところです。
まとめ
『ブラッサム』で照子が珠に京都行きと保との結婚を勧めたのは、珠を心配する気持ちだけではなかったのでしょう。
夫の体調が悪く、京都にいる保の世話が難しくなったこと。
将来有望な保に、気心の知れた結婚相手を迎えたいこと。
そして、長男・亨一の駆け落ちで複雑になった木村家の事情も、照子の考えに影響していた可能性があります。
一方、珠は島村先生との恋愛が噂になり、岩国での暮らしに苦しんでいました。
照子にとって今回の話は、珠にも木村家にも良い縁談だったのでしょう。
しかし、珠は家族と離れることを望まず、提案を断りました。
相手を助けたい気持ちはあっても、自分の考える幸せを押しつけてしまう。
照子の打算的で、どこか憎めない性格がよく表れた場面だったように思います。
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