『チェンソーマン』レゼ篇のラストで、デンジの待つカフェへ向かっていたレゼの前に現れたマキマ。
レゼはようやくデンジに会いに行くことを決めたのに、あと少しというところでマキマに行く手を阻まれます。
ここで気になるのが、マキマはなぜレゼを殺したのかということです。
レゼがソ連から送り込まれた敵だったから。
もちろん、それも理由のひとつです。
しかしマキマという人物を考えると、単純に「敵だから排除した」だけでは、この場面の怖さを十分に説明できません。
マキマにとってレゼは、チェンソーマンの心臓を狙う敵であると同時に、自分が管理しているデンジに強い影響を与える存在になっていました。
この記事では、マキマがなぜレゼを殺したのかに焦点を絞り、デンジとの関係からその理由を考察します。
※この記事には『チェンソーマン』レゼ篇以降のネタバレが含まれます。
マキマはなぜレゼを殺した?
マキマがレゼを排除した大きな理由は、レゼがデンジを自分の支配から連れ出す存在になったからと考えると分かりやすいです。
レゼはソ連から送り込まれ、チェンソーマンの心臓を狙っていました。
公安の立場から見れば、当然そのまま放置できる相手ではありません。
しかしレゼ篇の最後では、状況が少し変わっています。
レゼはデンジとの戦いを終え、一度は逃げようとします。
それでも最終的にはデンジの待つカフェへ向かいました。
つまりレゼは、単なる敵ではなく、デンジが公安やマキマから離れるきっかけになり得る存在になったのです。
デンジ自身もレゼに「一緒に逃げよう」と誘っています。
もし二人がカフェで再会していたら、デンジがマキマのもとから離れてしまう展開も考えられました。
マキマにとって、それは見過ごせないことだったのでしょう。
レゼはマキマにとって最初から敵だった
まず、レゼの立場を整理しておきましょう。
レゼはソ連から送り込まれた刺客で、目的はデンジが持つチェンソーマンの心臓です。
しかもレゼは爆弾の力を持つ強力な武器人間。
公安のデビルハンターたちを次々と倒し、デンジとも激しい戦いを繰り広げました。
マキマが公安側の人間としてレゼを排除すること自体には、十分な理由があります。
しかし、レゼ篇ではマキマがただ事件の後始末をしているようには描かれていません。
レゼがデンジの待つカフェへ向かう、そのタイミングで姿を現します。
しかもレゼが変身しようとした瞬間にはすでに対応できる状態でした。
マキマはレゼの動きを把握したうえで、確実に逃がさないよう待っていたように見えます。
ここに、公安としての任務だけではないマキマの意図が感じられます。
マキマにとって重要なのはレゼよりデンジだった
レゼ篇だけを見ると、マキマとレゼの対立のようにも見えます。
しかし、本当に重要なのは二人の間にいるデンジです。
マキマは物語の序盤からデンジに食事や住む場所、仕事を与え、彼が欲しがっていた「普通の生活」を用意しています。
デンジにとってマキマは、憧れの女性であると同時に、自分を拾ってくれた特別な存在でした。
そしてマキマは、その関係を利用してデンジを自分のそばに置いています。
そこへ現れたのがレゼです。
レゼはデンジと同じ目線で話し、学校へ連れ出し、一緒に笑い、恋愛を思わせる時間を過ごします。
マキマとはまったく違う形で、デンジの心に入り込んでいきました。
さらにデンジは最後には、レゼと一緒に逃げることまで考えています。
マキマから見れば、レゼはデンジの心臓を狙う敵であるだけでなく、デンジそのものを自分の手元から奪いかねない存在になっていたのです。
デンジが「一緒に逃げよう」と言ったことが大きい
レゼとの戦いに勝ったデンジは、彼女を殺しませんでした。
それどころか、レゼに一緒に逃げようと誘います。
この言葉は、マキマとの関係を考えるとかなり重要です。
デンジはそれまで、マキマに認めてもらうことや、マキマに好かれることを大きな目標にしていました。
そんなデンジが、レゼのためなら今の生活を捨ててもいいと思い始めたのです。
つまりレゼとの出会いによって、デンジの中にマキマとは別の人生を選ぶ可能性が生まれました。
レゼが一人で逃げるだけなら、デンジは公安に残ります。
しかしレゼがデンジのところへ戻れば話は変わります。
二人が再会すれば、デンジが本当にレゼと逃げるかもしれない。
だからこそ、レゼがカフェへたどり着く前に止める必要があったと考えると、マキマの行動にも筋が通ります。
マキマはデンジにレゼの最期を知らせていない
マキマの怖さがよく表れているのが、その後のデンジへの対応です。
デンジは花束を用意してカフェでレゼを待っています。
しかしレゼは来ません。
当然です。
その直前でマキマに襲われているからです。レゼがカフェへ向かう途中でマキマと天使の悪魔に襲われる展開は、原作第52話にあたります。
ところがデンジは、その事実を知りません。
デンジから見れば、
「レゼは自分のところへ戻ってこなかった」
という結果だけが残ります。
ここが非常に残酷です。
もしデンジがレゼの本当の行動を知っていたら、気持ちはまったく違っていたでしょう。
レゼは自分を選ばなかったのではない。
本当は戻ってきていた。
その事実を知らないまま、デンジはレゼとの関係を終えることになります。
マキマはレゼを排除しただけではなく、レゼがデンジのもとへ戻ろうとした事実そのものを、デンジから切り離したことになります。
マキマはレゼに嫉妬していた?
マキマがレゼを殺した理由について、「デンジを取られそうになって嫉妬したのでは?」と感じる人もいるでしょう。
ただ、マキマの感情を一般的な恋愛の嫉妬として考えると、少し違って見えます。
マキマが求めているのは、普通の女性としてデンジと恋愛することではありません。
マキマの本質を考えると、重要なのはデンジを自分の思い通りに動かせる状態に置いておくことです。
そのため、自分以外の女性にデンジが惹かれることそのものよりも、その女性によってデンジが自分の支配から外れてしまうことのほうが問題だったのでしょう。
レゼは実際に、そこまでデンジを動かしました。
デンジに「一緒に逃げよう」と言わせた女性です。
マキマにとってレゼは、恋のライバルというより自分の計画を狂わせる危険な存在だったと考えるほうが自然です。
なぜマキマは自分でレゼの前に現れた?
マキマは部下に任せるのではなく、レゼの前に自ら姿を現しています。
しかも天使の悪魔も配置し、レゼが反撃しようとするとすぐに封じています。レゼはカフェへ向かう途中でマキマに阻まれ、天使の悪魔の攻撃を受けます。
レゼは爆弾の力を持つ強敵です。
少しでも自由に動かせば、大きな被害が出る可能性があります。
そのため、真正面から長く戦うのではなく、変身する隙を与えず一気に制圧したのでしょう。
この場面では、それまで圧倒的な強さを見せてきたレゼがほとんど何もできません。
それによって、レゼの強さ以上にマキマがどれほど恐ろしい存在なのかも印象づけられています。
レゼ篇の最後は恋の悲しい結末であると同時に、マキマの異質さが一段階はっきりする場面でもあります。
マキマはレゼとデンジの会話まで知っていた?
レゼの前に現れたマキマは「田舎のネズミ」に触れます。
これは以前、レゼとデンジの間で交わされていた話と重なります。
レゼは田舎のネズミと都会のネズミについてデンジに問いかけていました。
その言葉をマキマが口にすることで、読者には不気味な疑問が生まれます。
マキマはどこまで二人のことを知っていたのか。
少なくとも、この演出によって「マキマは何も知らず偶然レゼを見つけた」という印象は薄くなります。
レゼからすれば、デンジと二人だけで過ごしていたと思っていた時間さえ、マキマの監視の外ではなかったのかもしれません。
ただし、「田舎のネズミ」が持つ意味そのものについては別のテーマになります。
ここでは、マキマがレゼの行動をかなり早い段階から把握していたことを感じさせる描写、と捉えておけば十分でしょう。
レゼを排除したことでデンジはマキマのもとに残った
結果を見ると、マキマの狙いは成功しています。
レゼはデンジのところへ戻れませんでした。
デンジはレゼが自分を選ぼうとしていたことを知らないままです。
そしてデンジは、それまでと同じ生活へ戻っていきます。
つまりレゼという「別の人生への出口」が消えたことで、デンジは再びマキマのいる世界に残されました。
ここがマキマの恐ろしいところです。
レゼを倒すだけなら、強い敵を排除したという話で終わります。
しかし実際には、レゼを排除することで、
デンジがレゼと逃げる未来まで消している。
マキマにとって必要だったのは、レゼとの勝負に勝つことではありません。
デンジが自分の手元から離れていく可能性をなくすことだったのでしょう。
まとめ
マキマがレゼを殺した理由には、まず公安側としての明確な理由があります。
レゼはソ連から送り込まれ、チェンソーマンの心臓を狙った危険な刺客でした。
しかし、それだけではありません。
レゼはデンジの心を動かし、ついにはデンジに「一緒に逃げよう」と言わせています。
つまりレゼは、デンジをマキマの支配から連れ出す存在になっていました。
マキマにとって、それは放置できないことだったのでしょう。
だからレゼがデンジの待つカフェへ向かう途中で、その道を断った。
そしてデンジには、レゼが自分のもとへ戻ろうとしていたことさえ伝わりませんでした。
レゼはデンジの心臓を奪おうとした敵でした。
しかし最後には、マキマにとってもっと厄介な存在になっていたのかもしれません。
チェンソーマンの心臓ではなく、デンジ自身の心を動かしてしまった女性。
それこそが、マキマがレゼを自分の手で排除した大きな理由だと考えられます。


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