『となりのトトロ』は、さつきとメイ、お父さんの3人が田舎の古い家へ引っ越してくるところから始まります。
荷物を満載したオート三輪に乗って、新しい家へやってきた草壁家。
しかし映画を見ていると、
「そもそも、なぜ田舎へ引っ越してきたの?」
「お父さんは大学で仕事をしているのに、なぜ不便そうな場所を選んだの?」
と気になりますよね。
結論からいうと、映画本編では草壁家が引っ越した理由は明言されていません。
ただ、お母さんが七国山病院に長期入院していることや、お父さんが新居を気に入った理由などを考えると、お母さんの退院後を見据え、家族4人で暮らすための環境を整えることが引っ越しの大きな理由だったのではないでしょうか。
今回は、草壁家がなぜ田舎へ引っ越してきたのか、作中の描写をもとに考察します。
となりのトトロ|草壁家はなぜ田舎に引っ越した?
草壁家が引っ越してきた時点で、お母さん・草壁靖子は七国山病院に入院しています。
新しい家で暮らし始めるのは、お父さんとさつき、メイの3人。
しかし、この家は最初から3人だけで暮らすために選んだ家ではないと考えられます。
物語の中では、お母さんが週末に一時帰宅する予定も立てられています。
つまり、お母さんが回復すれば、いずれ新居で家族4人の生活が始まることになります。
このことから、草壁家の引っ越しには「退院するお母さんを迎え、家族4人で新しい生活を始める」という目的があったと考えると自然です。
お母さんの入院先に近い場所を選んだ?
引っ越しとお母さんの入院との関係も気になるところです。
お母さんが入院しているのは「七国山病院」。
さつきとメイはお父さんと一緒に自転車でお見舞いに行っています。
決して隣近所という距離ではありませんが、家族が日常的にお見舞いへ行ける範囲に病院があります。
お母さんの入院が長期にわたっていることを考えると、入院中のお母さんに会いやすく、退院後も家族で暮らせる場所としてあの地域を選んだのではないでしょうか。
特に小さなメイにとって、お母さんと長期間離れて暮らすことは大きな負担だったはずです。
家族がお母さんの近くで生活することは、草壁家にとって重要だったと考えられます。
お母さんが退院した後の療養も考えていた?
草壁家の新居は、田畑や森に囲まれた自然豊かな場所にあります。
現在の感覚では交通の便が悪そうにも見えますが、長期療養していたお母さんが暮らす環境として考えると、また違って見えてきます。
静かで自然が多く、ゆったりと生活できる環境。
お母さんが病院を退院したあと、家族と一緒に生活しながら体調を整えていく場所として、あの家を選んだとも考えられます。
お父さんとさつき、メイが先に新生活を始め、お母さんが帰ってくるのを待つ。
草壁家の引っ越しは、お母さんを迎えるための準備でもあったのかもしれません。
なぜあんなに古い家を選んだの?
もうひとつ気になるのが、草壁家の新居です。
初めて家を見たさつきとメイは大喜びしますが、かなり年季の入った家です。
柱は傷んでおり、カンタからは「おまえんち、おばけやしき!」と言われてしまいます。
それなのに、お父さんはあの家を気に入っています。
その理由を考える重要なヒントが、家のそばに立つ大きなクスノキです。
お父さんは大きなクスノキを気に入っていた
メイがトトロと出会ったあと、お父さんはさつきとメイを連れて大きなクスノキへ向かいます。
そこでお父さんは、あの木を見て家を気に入ったという趣旨の話をしています。
つまり、お父さんにとって重要だったのは、建物が新しいかどうかではなかったのでしょう。
大きなクスノキがあり、森や田畑に囲まれている。
家そのものよりも、家を取り囲む自然環境に魅力を感じていたことがわかります。
お母さんが帰ってきたあとに家族4人で暮らす場所としても、お父さんにとって理想的な環境だったのかもしれません。
お父さんの仕事のために引っ越したわけではない?
引っ越しというと、転勤や転職を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、草壁家の場合は少し違います。
お父さん・草壁タツオは大学で考古学を教えており、新居でも大学へ出勤しています。
また、自宅では机いっぱいに本や資料を広げて仕事をする姿も描かれています。
仕事そのものが大きく変わった様子はありません。
それどころか、大学へ通うことだけを考えれば、田舎暮らしは必ずしも便利とはいえなさそうです。
それでもあの場所へ引っ越したことを考えると、仕事の都合よりも家族の事情を優先して新居を選んだと考えると納得できます。
草壁家の引っ越し先はどこ?
では、草壁家が引っ越してきた場所はどこなのでしょうか。
『となりのトトロ』には、実在する地域を連想させる描写がいくつも登場します。
冒頭で運ばれている荷物には「狭山茶」と書かれた箱があり、作中には「松郷」という地名も登場します。
現在の埼玉県所沢市にも「松郷」という地名があります。
また、七国山のモデルとして知られる八国山緑地は、東京都東村山市と埼玉県所沢市の境付近にあります。
こうしたことから、『となりのトトロ』の風景は、埼玉県所沢市を含む狭山丘陵周辺がモデルのひとつとして知られています。
田んぼや畑、雑木林が広がる風景を見ると、お父さんがあの場所に魅力を感じたこともうなずけます。
草壁家はどこから引っ越してきた?
引っ越し先と同じくらい気になるのが、草壁家が以前どこに住んでいたのかという点です。
映画では、以前の住所までは描かれていません。
ただ、さつきは引っ越したあと新しい学校へ通い始めています。
以前とは学校も生活圏も変わる、家族にとって大きな引っ越しだったことがわかります。
また、お父さんは新居から大学へ通っているため、仕事を辞めて遠く離れた土地へ移住したというより、仕事を続けられる範囲で、より自然豊かな場所へ生活の拠点を移したと考えると物語にも合います。
引っ越しは家族4人で暮らすための新しいスタートだった?
『となりのトトロ』の冒頭では、さつきとメイが引っ越しを楽しんでいます。
古い家を見ても怖がるどころか大喜び。
まっくろくろすけを見つけたり、家の中を探検したりと、新しい生活への期待にあふれています。
しかし、その一方で家族にはお母さんが入院しているという大きな心配事があります。
だからこそ、あの引っ越しにはもうひとつの意味があるように感じられます。
お母さんが元気になったら、この家で家族4人一緒に暮らす。
お父さんはその未来を考えながら、新しい家を選んだのではないでしょうか。
自然に囲まれた場所で子どもたちが生活を始め、お母さんが帰ってくるのを待つ。
そう考えると、物語の冒頭に描かれる引っ越しは、単なる舞台設定ではなく、離れて暮らしていた草壁家が再び家族4人で暮らすための新しいスタートだったとも考えられます。
まとめ
『となりのトトロ』で草壁家がなぜ田舎へ引っ越してきたのかについて考察しました。
映画では引っ越しの理由そのものは明言されていません。
しかし、
・お母さんが七国山病院に長期入院している
・新居からお母さんのお見舞いへ行ける
・お母さんが一時帰宅する予定も立てられている
・いずれ新居で家族4人が暮らすことになる
・お父さん自身が大きなクスノキのある環境を気に入っている
・引っ越し後もお父さんは大学の仕事を続けている
といった点をつなげて考えると、お母さんの入院や退院後の生活を見据え、家族4人で暮らす環境を整えることが引っ越しの大きな理由だったと考えられます。
古くて少し不便そうな家でも、大きなクスノキがあり、豊かな自然に囲まれている。
お父さんにとっては、そんな環境こそがお母さんを迎え、さつきとメイと一緒に新しい生活を始める場所として魅力的だったのでしょう。
『となりのトトロ』は「引っ越し」から始まる物語ですが、その引っ越し自体が、草壁家がもう一度家族4人で暮らす未来へ向かう第一歩だったのかもしれません。
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